東京湾の魚を食べても大丈夫?

とにかくよく聞きます。いくら現在東京湾がきれいになってきたといっても、海に出ればだれでも分ります。そして、肉眼で分らないダイオキシン、PCB、重金属など東京湾が大変汚染されています。世界ほかにない豊かさの「水産の宝蔵」江戸前の海がまるで「都市のゴミ箱」にされてしまった時代がいまからさほど遠くない。さらに、残念な話ですが現在でも、ばれなけりゃやっていいっとまったく常識のない会社や工場が中和せずに毒物や排水を東京湾に流しているところがあります。たまに見つかってニュースになるけど実際にそういうところが多いと思います。

自分は生物学関係の仕事をしているので釣り魚の安全を心配していました。それで、いくつかのことを守っています:

  1. 内蔵は必ず取り除いて食べないこと。ハゼやカレイ、白身魚ではダイオキシンが内蔵にくっついている脂に蓄積する。水銀はだいたい肝臓に積ります。
  2. 障害のある魚は食べないこと。ヒレやエラのできものや、背中がへんに曲がっている魚は時々釣りあげます、それらを即海に戻します。又魚を捌いて身の中や中骨につぶつぶしているものとか、へんな色している筋肉のものも時々出会います。おかしいと思ったら食べない。
  3. 料理して魚を口にする時に強烈な化学物質や石油の匂いをする魚があります。料理までしてもったいないと思うけどそういう魚は食べるのをやめる。場所によるけど湾奥のクロメバルは特に。

魚を捕食する、長く生きる魚は蓄積がどんどん進むのでハゼみたいな当歳魚は比較的に安全で、スズキや回遊性の大型青物(マグロなど)が一番よくないと思います。しかし、内臓を食べないこと以外にあんまりにも気にしない。寂しい話ですが考えてみると世界のどこの海でも人間様の手によって大変汚染されています。 南極のペンギンも、人間が食べられないほど(殺虫剤の)DDTが体内脂肪に蓄積していることはよく聞きます。どんなものでもそうですが、適度にするのがいい。どんな最高級な魚、肉、野菜でもそれだけを毎日3食食べれば体によくない。自分はよく釣りに行くといっても多くても1週間21食の中に東京湾の魚を3食ぐらい食べる。ほかにもっと体に悪いものがたくさんあります。高速道路でバイクに乗るや、大気汚染のひどい都内に住んでいて、毎日タバコ40本吸うや、夜になると暴飲する人が東京湾で釣ったカレイ1枚食べることが「怖い」というのがとても皮肉。

水銀の話

学問的に調べたのを少し読んでみました。2001年の日衛誌(Japanese Journal of Hygiene 56, pp.492-499)にでた論文によるとRuijin Zhangら(横浜市立大学医学部)がシロギス・マイワシ・マコガレイの3種類の釣り魚を東京湾奥、東京湾口2か所、相模湾、銚子でとって筋肉(身)に蓄積している水銀を測定しました。すると湾内の魚は外海より少し水銀濃度が高かったのですがどんな産地でも3種類の魚の総水銀濃度が国規制値範囲内(0.4μg/g wet wt.)でした。2002年の 論文(Food Additives and Contaminants  19 (8), pp.715-720)で イタリアのバーリー大学獣医学部のStorelliらが地中海産のメバチマグロと本マグロの身の総水銀濃度を測定して発表しました。メバチは平均1.17、本マグロは1.18μg/g wet wt. いずれもEUが定めた規制値範囲以上でした(1μg/g)。知らない人に「東京湾の魚が汚染していて食べたくない」といわれたら「じゃあ回転寿司のマグロ喰うか?東京湾のキスより10倍ぐらい水銀が入ってるけど…」と答えて上げましょう。